

藍染 (あいぞめ)
サイトオープン後、初となる記事は伝統的な染色技法の藍染について触れてみたいと思います。
染物やファッション話題でたまに耳にする名称ですが、その歴史や染色方法などはあまり 一般的に 知られていませんよね。
今回、モノ見リョク編集部では藍染体験も合わせて工房を訪ね色々と話を聞いてみました!
国内屈指の藍染職人が工房を構えるのは東京都青梅市


現在、日本国内でも指折り数える程度の数しかいないという藍染職人。
中でも日本を代表する藍染職人として、国内外で高い評価を受ける村田徳行さんに会うため編集部は東京都青梅市へ車を走らせました。
圏央道の日の出ICを降りて車を走らせること10分青梅市長淵、ここに江戸時代から続く染色技法を今に伝え続ける村田染工㈱が営む藍染工房「壺草苑」があります。
村田染工が営む藍染工房 壺草苑


笑顔で迎えてくれたのは藍染工房 壺草苑の工房長
村田徳行(むらたのりゆき)さん59歳。
やさしい笑顔と藍色に染まった両手がとても印象的です。
忙しい製造スケジュールの中、藍染の道に入った背景や染料の製造の工程、これから目指す新たなステージなど丁寧に話を聞かせてくれました。


村田さんは江戸時代に絹製品を禁じられた庶民の衣料品として流通した、密かに少量の絹が織り込まれた織物「青梅嶋(オウメジマ)」に感銘を受け染物の本場、徳島県で染や藍の生産について学び、修行後の1989年に藍染工房「壺草苑」オープンしました。
伝統技術の悲しい過去


工房のオープン後、日々の創作活動や展示を行いながら伝統技術の深い世界へ没頭していく中で一つの悲しい事実に突き当たったそうです。
それは
どんな素晴らしい伝統的な技術も名産地として広く知されていく影に必ず乱造、乱売が横行し、品質や信頼性の低下を招き、結果的には本物のシーンが破壊されてしまうということ。
かつて国内流通の約70%を誇ったと言われる青梅の織物や夜具製品も決して例外ではなく、最盛期の当時100軒以上あった機織事業者は現在5軒まで減少してしまいました。
そんな厳しい状況の中でも自身が惚れ込んだ青梅嶋や藍染をこれから先の未来へもしっかりと伝えていきたいと村田さんは言います。
天然藍灰汁醗酵建


藍染は染液の仕込みに細心の注意と長年の経験を要します。
壺草苑では日本の藍染めの歴史において黄金期といわれる江戸時代を中心に行われていた
天然藍灰汁醗酵建
という技法を用いて染液を仕込んでいます。
具体的には蓼藍(たであい)という植物の葉を乾燥、発酵させた染料「すくも」と「灰汁」で構成される液体に日本酒や小麦の外皮、石灰などを使って徐々にかさを上げながら染液を発酵させていきます。
仕込んだものは7~10日程で染料として使用できる状態になり、その染液の中で生地を繰り返し染めることにより藍染め独特の美しい色が映し出されます。
昨今では「すくも」に苛性ソーダなどの材料を使用した手法や「すくも」にインディゴを混ぜて使う手間やコストも抑えられす手法などがあるそうですが、壺草苑ではあえて天然藍の優しい色合いと美しさにこだわり続けているそうです。
伝えることとは正直な仕事をすること
村田さんが大切に守り続けるこの伝統的な手法は仕上がりの美しさだけでなく100%天然由来成分であることから安全性も確保されています。
この手法を貫く職人は日本国内でも指折り数える程度しかおらず、村田さんもそんな数少ない職人の一人です。
今後もこの技術を伝えていくためにはどんな取り組みが必要なのか尋ねてみると
「藍染めの作業工程において
嘘なんていつでも、いくらでもつけるんだよね。
でも正直にやり続けることが自分にとっての藍染めだからさ」
と村田さん。
手間や時間がかかっても藍染本来の表情を伝えたいという気持ちと満たされることのない探求心を感じました。
村田染工は時代とともに歩みながら今年創業100年という大きな節目を迎えます。今後の展開や挑戦したいことについて聞いてみました。
すると
「今までレディースアイテムを中心に展開してきましたが、これからはメンズを含めた商品展開を考えていきたい」
と新たなステージでの第一歩を語ってくれました。
編集部が藍染体験に挑戦


さて、色々と村田さんからお話を伺いましたが、技術的な部分については実際にやってみないとわからない・・・
ということで編集部では実際に藍染体験をさせていただきました。
藍染独特の模様はどうやって出すのか?
誰もが一度は疑問に思う藍染独特のあの模様・・・
どうやって出しているのか?
編集部でも実際に藍染の体験するまで謎でした。
まずは生地となる素材を下の画像のように結び目やゴム止め、ねじりやジャバラ状に折りたたんだりします。
すると繊維が密着することによって染液が奥まで入りやすい部分と入りにくい部分ができあがります。


結び目が無い部分は染液に対して直に触れるので色が入っていきやすく、逆に結び目のコブの中など繊維の密着率が高い部分は染液が中に入っていきずらくなるというわけです。
一度の染色で簡単に染まるわけではない
藍染体験を中で予想と違ったのは、思っていた以上に一度の漬け込みではあまり色が浸透していかないということです。
染液作業をしていると、本人的には深く色が浸透したように見えます。


しかし・・・
最後の仕上げで水につけて染液を洗い流してみると・・・


本人が思っていたほど色が濃くなかったのです。しかも染まり方がバラバラです。


そうなると下の画像のような深い藍色を均等に出すためには多くの時間と技術が必要になることが良くわかりますね・・・。


しかしこの染料の浸透のしにくさがあるからこそ濃い藍、淡い藍、グラデーションなどを表現することができるわけですね。
藍染体験してみての感想
体験するまで「どうやって柄やグラデーションを出すのか?」、「どのくらいの作業時間がかかるのか?」など疑問でしたが体験を通じて理解することができました。
藍染は生地の絞り方(結び方)やたたみ方と染色する位置、回数によって色味や柄、濃淡を絶妙にコントロールしながら模様を表現しているんですね。
結び目やねじりの作り方でどんな柄が生まれるかの立体的な想像力と何回染色をするとどのくらいの濃さになるかの繊細な感覚が必要になります。
まとめ


今回初めて藍染の生産現場にお邪魔させていただき、その歴史や技術の深さについて触れてみましたがいかがでしたでしょうか?
触れたとはいってもホントに入り口の入り口というようなところですが・・・。
雑誌やweb、テレビなど各種メディアでも紹介される機会が多い藍染ですが、その裏側では今回取材させていただいた村田さんのような職人さんが今日も伝統技術を伝えるべく正直な仕事をしているんですね。
「藍染」というワードを見聞きしたらぜひそんな様子を想像していただけたら嬉しいです。