

先日、山梨県を中心に製造される伝統工芸品、 印伝 について投稿しましたが、今回は 柄 や色の組み合わせについて見てみたいと思います。
印伝 の見た目を左右する色と 柄


甲州印伝を初めて見た方はその種類の多さや見た目の鮮やかさに感動しますが、アイテム選びをする際に大きく分けて4つのポイントがあります。
- 下地となる鹿革の色
- 上に塗られる漆の色
- 柄の種類
- アイテムのかたち
印伝は下地となる鹿革の上に柄の形の漆を乗せることにより柄付けされています。そのため鹿革の色とその上に乗る漆の色、柄の種類、アイテム形、主にこの4つで見た目ときの印象が変わります。
古典柄で人気の高い小桜で色の組み合わせ具合を見てみましょう。






このように同じ柄でも色の組み合わせで見た目の印象が大きく変わります。
また現物を見るとわかりやすいのですが、光の当たり方や鹿革に載る漆の色、柄の種類などによって下地の鹿革の色の濃さも違って見えたりもします。
ではこの鹿革と漆の色の組み合わせどのくらいあるのでしょうか・・・
見ていきましょう
鹿革と漆のカラーバリエーション


ここでは山梨県の甲州印伝製造元、印傳屋 上原勇七で販売されている中でも最も一般的な技法、「漆付け技法」で作られる財布、小銭入れ、印鑑ケース、ポーチといった小物を展開する通常のラインナップを例に見ていきたいと思います!
【関連記事】印伝の技法について下記の投稿で紹介しています。
印伝 の下地となる鹿革の色の種類
印伝における鹿革は簡単に言えば、柄が載っている以外の部分を言います。


印伝の中で下地となる鹿革の色を単体で見てみると現在、現在下記の5色が展開されています。
- 黒
- 赤
- 紺
- 紫
- 濃茶
どのような意図で色が選定されているかまではわかりませんが、漆の色や艶を強調するためなのか比較的濃いめの色が使われていますね。
柄 として鹿革に載せる漆の色


鹿革の色が5色展開なのに対して漆の色は現在下記の4色が展開されています。
- 黒
- 白
- 赤
- ピンク
店頭など印伝の商品がズラリと並んでいるともっと漆の色に種類があるように見えますが、実は4色だけなんですね。記事を書いている私自身も調べてみて意外でした。
鹿革と漆の色の組み合わせ


上記のカラーバリエーションから現在は下記の14種類の組み合わせが展開されています。
- 黒地×黒漆
- 赤地×黒漆
- 紺地×黒漆
- 紫地×黒漆
- 濃茶地×黒漆
- 黒地×白漆
- 赤地×白漆
- 紺地×白漆
- 紫地×白漆
- 濃茶地×白漆
- 黒地×赤漆
- 赤地×赤漆
- 黒地×ピンク漆
- 紫地×ピンク漆
ここまでで鹿革や漆の色の種類、組み合わを見てきましたが、ここから漆として載る柄の種類が掛け合わされてきます。
ではその種類は一体どのくらいあるのでしょうか?
見てみましょう。
印伝 の 柄 の種類
現在はリリースされたばかりの新柄から古くから愛され続ける古典柄など合わせて33柄が展開されています。


- 小桜菖蒲
- 小桜
- 亀甲
- 青海波
- 菊
- 紗綾形
- ひょうたん
- とんぼ
- 爪唐草
- 菖蒲
- 菱菊
- 花唐草
- 梅
- 変わり菊唐草
- ぶどう
- 線菊小
- ローズ小
- クレマチス
- アメリカンブルー
- あじさい
- コスモス
- 椿
- 七宝繋ぎ
- 孔雀
- 雪割草
- 花格子
- 網代編
- 変わり市松小
- 変わり市松
- 輪繋ぎ小
- 波うろこ
- ディアー
- チロリアンテープ
これらの柄は毎年新しい柄が追加されたり、生産終了になったりしながら常にアップデートを繰り返しながら時代のニーズに合わせた商品開発が行われています。
ちなみに「あじさい」は最新の柄で現在年齢を問わず人気の柄となっています。
アイテムの形
最後に商品選びで一番重要な要素であるアイテムの形が入ってきます。色と柄だけでもすごい数のバリエーションがあることがわかっていただけたかと思いますが、最後に「希望する色柄で欲しい形のアイテムが製造されているのか?」というところになってきます。
現在、通常ラインナップで展開されている小物アイテムだけでも110種類以上の形が存在します。
そうなるとちょっと想像しただけでもすごい数の組み合わせになります。


すべての組み合わせを製造すること自体はもちろん技術的には可能です。しかし材料の確保や安定的な在庫供給などを考えると、とてもすべてのアイテムをすべての色柄で作るのは現実的ではありません。
そこで、以前の記事でも紹介した通り、印傳屋 上原勇七では選ばれたアイテムのみがレギュラー商品として製造されており、毎年どの組み合わせのアイテムを製造するかは9月の新作発表に合わせて公開されています。
なので本記事で紹介している色柄のバリエーションも2020年9月に改変されたものなので2021年8月末までのものとなります。
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製品ラインの種類
ここまで印傳屋 上原勇七の小物の通常ラインについて見てきました。


しかしラインナップは通常ラインだけではなく使用シーンや使う方に合わせたブランドラインが多数用意されています。
具体的にどんなものか見ていきましょう。
通常ライン
通常ラインの特徴として基本的に色のついた鹿革に対して単色の漆が使われて柄付けされています。
このラインは後述するブランドラインと比較した際、製造されているアイテムの幅が非常に広いため、「この色柄でこの形が欲しい!」という方の要望に幅広く応えられる展開内容となっています。


一見、「ブランドラインの方が良いもの」と思っててしまいがちですが、選択肢の数という点では通常ラインの方が良いんですね。
ブランドライン
ブランドラインは通常ラインとは違う仕様のボディーを使ったアイテムやブランドラインでしか販売しない柄や形、通常ラインと同じ柄でも2色刷りにするなど、製造に時間のかかる特別なモノが揃っています。


















男性向けの財布やキーケース等のメンズブランド「INISHIE」や女性向けのバッグ、財布などを集めた「VIORZA」など、使う方の年齢や性別、ビジネス、普段使い等、各シーンやアイテムに特化したシリーズが展開されています。


上記画像はブランドラインの「庵(いほり)」というシリーズのカタログですが、このようにブランドラインはアイテムごと決まった型だけが製造されているため、通常ラインナップで欲しい形があったとしても同じ形をブランドラインの柄で買えるとは限りません。またその逆のパターンも同じことが言えます。
柄 の2色刷り
ブランドラインの中でも人気が高いのが2色の漆を使う2色刷りのシリーズです。


下の写真は「なごみ」というシリーズで黒と赤のとんぼ、2色刷りとなっています。


色の組み合わせ自体は紺✕黒、柄はとんぼですが、ランダムで部分的に赤い漆が使われています。
単色と比べると赤の刺し色が目を引くため、通常ラインを愛用されている方でも初めて見た際は「何か違う」と感じます。


一見すると通常ラインの単色刷りと同じようなものに見られるのですが、黒用の版と赤用の版の2枚を使用するため作業の工数としては倍の時間がかかります。
1枚目の版で漆付けした後、乾くのに2週間待ち、その後2枚目の版の漆付けを行います。そのため通常ラインに比べ、金額も高めになってくるわけです。
細かい部分で通常ラインとは異なる仕様
こちらは「かぐわ」と呼ばれるブランドラインのペンケースで黒地の鹿革にピンクと白のバラが2色刷りされています。


細かい部分になりますが、ポイントポイントでベージュ色の牛革や金具にピンクゴールド色が使われています。




ここでは2色刷りのブランドラインを例に出しておりますが、それ以外にもブランドラインにしかない柄や形などがあり、通常ラインとはまた違った世界観があります。
私たちは日常的に接しているのでこれらのブランドラインのアイテムを使っている方を見ると「長年印伝を愛用している方」もしくは「印伝に詳しい方」そんな印象を受けます。
メーカーの独自性が見える色や柄
ここまでで印傳屋 上原勇七で展開するラインナップを例に紹介してきましたが、これはあくまで同社の一つのラインナップの話に過ぎません。


鹿革の色や漆の色、柄の形は製造メーカーごとに大きく異なります。
とんぼや小桜などの古くからあるような古典柄は多数の製造メーカーによって作られていますが、柄の大きさや鹿革に対して漆の占める割合など細かいところがが微妙に違い、その辺でメーカーの個性がでます。
また印伝の愛好家や業界人は柄や色の組み合わせを見ただけでどこのメーカーのものかすぐにわかります。
まとめ
今回は印伝の商品選びにおいてポイントとなる色や柄の組み合わせについてまとめてみました。
以前の投稿にもまとめた通り、印伝の技法は基本的にはステンシルと同じ理屈で柄付けされていますが、色の使い方や柄の種類によってこれだけ幅広く展開できるんですね。
今回紹介した印伝のアイテムは私たちが運営する日本のいいもの.jpで販売しておりますのでのぞいていただけたらと思います。
では次回の投稿でお会いしましょ~