印伝とは どんなモノ?

印伝とは どんなモノ?
印伝の「薄型長財布(みその柄)」の画像
印伝とは 鹿革に漆で模様付けをする山梨県を中心に製造される伝統工芸です。財布や名刺入れ、ポーチ、ペンケースといった小物からバッグなどまで幅広いアイテムが製造されています。
印伝の柄サンプル画像

私たちも20年以上印伝を取り扱ってきていますが、中でも財布、名刺入れ、小銭入れ、印鑑ケース、メガネケース、などは特に広く使われており、仕事での名刺交換や飲み会のお会計などのいろいろなタイミングで愛用者を見かけます。

以前は人気の中心は50~60代の年齢層でしたが、近年ではモダンな柄やさまざまな色の組み合わせのアイテムが登場し、性別を問わず若い方にも人気があります。

本投稿ではそんな印伝の豆知識を見ていきたいと思います。

地元民から見た 印伝 とは?

先述の通り印伝は山梨を中心に製造されていますが、地元民にとって「印伝」とはどんなものなのか・・・

幼少期は・・・

「おばあちゃんが使っている印鑑ケース」

「おじいちゃんの愛用している財布、セカンドバッグ」

といった印象が強いと思います。

しかし、社会人になって働きだすと訪問先で名刺交換をする際に・・・

「おぉっ!印伝の名刺入れ使われているんですね

「そうなんですよ。落ち着いた感じが好きで財布も使っています」

こんなシーンに遭遇することが多くなってきて徐々にビジネスシーン、プラーベートともに印伝に接する機会が増えていきます。

このような背景からいかに幅広い年齢層に愛用されているのかよくわかります。

県外の方からすると意外に思われるかもしれませんが、山梨県では20代の若手社員から企業の取締役の方まで、肩書に関係なく本当に多くの方が「地元のものだから話題になる」「使ってて飽きが来ない」という理由から愛用しています。また近年では黒×ピンクの組み合わせや雪割草や変わり市松などトレンドに沿った柄の登場で徐々に愛用者層が広がってきています。

山梨県の 印伝 製造元は4社

印伝の製造元は、記事投稿時点では山梨県内には4社あります。

印伝の漆塗りの風景

印伝(印傳)のおもしろいところは製造元によってオリジナルの色の組み合わせやオリジナルの柄があることです。例えば同じ「小桜」の柄でも花の大きさや柄間の間隔など微妙に違います。また製造元によってある柄、ない柄も存在します。

ここ最近では製造元によっては独自にコラボアイテムなどもリリースしており、コラボ相手となるパートナー企業もそれぞれ独自性が出ています。

私たちが取り扱っている「印傳屋(上原勇七)」ではイタリアのブランド「GUCCI(グッチ)」やアメリカの「TIFFANY&CO.(ティファニー)」、イギリスの「Asprey(アスプレイ)」などとのコラボアイテムをリリースしています。

GUCCIのショップ外観画像

【2015年2月23日】グッチ職人の工房が伊勢丹に出現。伊勢型紙&甲州印伝との限定コラボバッグ発売

参照元:https://www.fashion-headline.com/article/2519

【2017年10月6日】印傳屋がアスプレイ(Asprey)のクリエーション・コラボレーション・パートナーに指名されました

参照元:https://www.inden-ya.co.jp/news/20171006/

また日本で唯一の甲州印伝の伝統工芸士、山本裕輔氏が営む「印伝の山本」では印伝の魅力を若い世代にも広く伝えていきたいという思いからゲームやキャラクターとのコラボを積極的に取り組んでいます

印伝の山本のコラボ商品紹介ページ

【印傳の山本】製作事例・コラボ商品

参照元:http://www.yamamoto-inden.com/products?category=881733

また「印伝の山本」では好きな形、色柄の組み合わせで作ってくれる「お誂え」というオーダーメイドサービスも行っています。

以前の記事でも投稿しておりますが、印伝(印傳)は欲しい!と思ったタイミングで必ずしも自分の好みの形×色柄でアイテムが製造されているとは限りません。

決まった色柄でアイテムを統一したい!という方にはとってこのオーダーメイドサービスはありがたいですね。

どうやって 印伝 の柄をつけてるのか?

柄のつけ方にはいくつかの技法がありますが、すべてに共通するのは鹿革にマスキングをして上から柄付けをしているという点です。

印伝の製造風景

近年話題になっている覆面アーティストBanksyに代表されるいわゆるステンシルと呼ばれる手法と理屈は同じです。Banksyはスプレーを使っているのに対し、印伝の製造においては漆等が用いられているというイメージです。

ステンシルのイメージ画像

印傳屋さんが公開されている動画を参考にして印傳の技法を見ていきましょう。

漆付け技法

一般的に知られている印伝、数的にも圧倒的にユーザーが多いのはこの漆付け技法と呼ばれるもので柄付けされた製品になります。

鹿革の上に柄同じパターンの穴が開いている板(版)を当て、その上から色のついた漆を塗っていきます。その後、版から鹿革を剥がすと柄の部分だけ漆が残る・・・というものです。

ただしステンシルはスプレーを吹いた後、すぐに版をとっても問題ありませんが、印伝の場合には漆の粘着力があるため剥がす作業も熟練の技術が必要になります。

燻技法(ふすべぎほう)

この技法で模様付けされた印伝は山梨県民でもなかなか見かけることはなく、私自身も展示物でした見たことがありません。

この燻技法(ふすべぎほう)は大きな筒の表面に鹿革を貼り、わらや松ヤニを燃やし、燻して柄付けするというものです。印伝のルーツともいわれる技法で現在は印傳屋上原勇七のみで製造が行われている技法です。

動画を見る限りでは単純な技法に見えますが、色の付き方を均等にすることが非常に難しく、熟練の職人だけができる作業だといわれているそうです。

動画でも語られている通り、直線的な柄にはマスキングに糸が用いられていますが、それ以外の柄についてはのり付けした鹿革を燻してその後のり部分をはがすそうです。

ちなみに漆付け技法と比べて作業時間や専門的なスキルも必要になるため商品ラインナップとしては高額ラインのアイテムになってきます。

更紗技法

この更紗技法で作られた印伝も燻技法と同様になかなか見ることができないアイテムです。

更紗技法は最初に紹介した漆付け技法を応用したような技法です。色ごとに型紙を変えて複数の色で柄を表現する技法です。

特殊なシリーズを除き、基本的に漆付け技法の漆は単色なので更紗技法と比べると色の鮮やかさという点では全く違うものに見えますね。

それゆえに色の調合や均一に塗布する作業などは熟練が求められる技法です。

それぞれの柄が持つ意味を見る

印伝(印傳)には多数の柄(パターン)があります。新たにリリースされるいわゆる新柄もあれば、古典柄と呼ばれる古くから愛され続ける柄もあります。特に古典柄については古くから伝わるいわゆる縁起物としての意味が込められており、そこに魅力を感じて同じ柄で多数のアイテムを揃える方や、同じ柄でもカラーバリエーションを変えながら使い続ける方もいます。

青海波(せいかいは)

印伝の青海波
ウロコのように並ぶ連続模様は「大海原」を表現しており「海がもたらす幸福を呼び起こす」、「どこまでも続く穏やかな波のように未来も平穏に過ごせるように」といった思いが込められているといわれています。

とんぼ

印伝のとんぼ柄
トンボはその昔、武士の間でとんぼは前にしか進まないという特徴から「勝虫(かつむし)」と呼ばれて武具の装飾に使われてきました。現在でもこのようないわれから仕事に使う名刺入れやパスケース、財布等にとんぼ柄を選ぶ方がいます。

小桜

印伝の小桜柄
こちらも見ることが多い模様の一つです。春を象徴する花として日本人に年代性別問わず愛され続けている柄です。一見、女性が好む柄に思えますが、「桜の散り際はいさぎよい」ということから男性にも人気があります。

などなど・・・・

弊社で安定的に人気のある柄の一部を紹介しましたが、柄の種類はまだまだだくさんあり、古典柄以外の現代的な柄にもそれぞれ作り手の思いや願いが込められています。

その他の柄については印傳屋上原勇七のホームページでも公開されていますので印伝の購入を検討されている方はぜひその柄が持つ意味もあわせて検討してみてくださいね。

印伝の生産者は複数ある上に、色柄の組み合わせもすごい数なので購入を検討されている方はとても悩むと思います。そんな時、柄の意味を付け加えてみると意外とすんなりと決まるかもしれませんね。

印伝 デビューにおすすめのアイテム

私たちは20年以上印伝を販売し続けておりますが、お客様の多くが最初は印鑑ケースや小銭入れから愛用し始めます。その後、数年使い込んで手馴染みが良くなってきたことを体感されて財布やポーチ、その後バッグといった具合に徐々にアイテムの幅を広げていくお客様が多いです。

そこで「初めて印伝を使いたいと思っている」という方にオススメしたいのは下記の3アイテムです。

印鑑入れ

印伝の印鑑入

印鑑入は3種類ほどありますが、中でも画像の2種類が特に人気です。価格は3種類とも1,870円(税込)とお手頃価格で初めての印伝アイテムということで手の取る方も多いです。

小銭入れ

印伝の小銭入れ

次に人気なのが小銭入れです。こちらも左のファスナータイプで2,200円(税込)、右の口金タイプで2,750円(税込)なので比較的手に取りやすい価格です。ファスナータイプは男性にも人気があり、最初に小銭入れを購入し、後々同じ色柄に合わせて財布を購入するというパターンもよくあります。

ペンケース

印伝のペンケース画像

最後はペンケースです。こちらは4,730円(税込)と少々値が張りますが、ビジネスシーンでも使われる機会が多く人気があります。4×18×3.5cmとコンパクトサイズなのでビジネスバッグにちょうどいいサイズ感です。

これらのアイテムに共通するのはキーホルダーやストラップといったものではなく日常的に使うアイテムというところです。価格的にも手に取りやすく質感が変化していくことも実感できるというポイントが魅力なのでしょう。どれも新年度に揃えたくなるようなアイテムなので来年度に向けて検討してみるのもよいと思います。

まとめ

今回は山梨県を代表する伝統工芸品「印伝」についてまとめてみました。

私たち山梨県民にとっては子供の時から身近にあった印伝ですが、近年では形や柄も変化してきていると同時にその質感や経年変化も含めて楽しめることから海外でも評価され徐々に認知を広めております。日本から海外へのお土産品としてもとても喜ばれます。

ショッピングで見かけた際にはぜひ手に取ってその質感を実感してみてください。きっとその魅力がわかっていただけると思います。

読みものカテゴリの最新記事