棕櫚(しゅろ)
この名前を聞いたことはありますか??

筆者は地元に同じ名前の飲食店があったので名前だけは知っていました。
が、それがどんなモノで何にどう使われているかなど全く知りませんでした。
現代の日本ではなかなかその名前を耳にすることが無くなってきているようですね。
モノ見リョク編集部のあるカワグチ企画では長年、棕櫚の魅力を広めつつ製品を販売してきました。
今回はそんな棕櫚(しゅろ)についてどんなものなのか、どうのように使われているのか一緒に見ていこうと思います!
棕櫚(しゅろ) とは木の名前
さっそく結論から始まる見出しにしてしまいましたが、棕櫚とは樹木の名称です。下の写真が棕櫚の木ですが皆さんも身近なところで見かけたことがあるかと思います。扇形の葉が特徴的ですよね。

棕櫚はミャンマー~中国、日本では九州の南部にかけて多く自生しているそうです。しかし寒さに強いという特性があるため、九州より西側でも育つことができ、北では東北地方でも育つようです。

常緑樹で湿度や日のあたり方など環境を選ばず、火や潮にも強く、一般的な樹木と比べて強くたくましい樹種です。
比較的ゆっくりと成長していくので管理の手間がかからないということで庭園樹としても親しまれてきました。
高さは3mくらいから大きいものだと15mくらいまで育つようです。
普通の木と大きく異なるところは枝が無く、幹がまっすぐと伸びていて、天辺には扇形の特徴的な形の葉が不規則に伸びているということです。
さらにもう一つ大事なポイントがあります。

それは幹を包み込む繊維状の毛のような樹皮です。
これは他の木では見かけない棕櫚独特の大きな特徴ですね。
棕櫚(しゅろ) は何に使われているの?
先述の通り、庭園の観賞用としてはなじみがありますが、棕櫚はどんなところで使われているのでしょうか?少し調べてみました。
お寺の鐘突き棒 (撞木:しゅもく)

皆さんも一度は突いた経験があるのではないでしょうか??
お寺の鐘に使われる鐘突き棒に棕櫚の木が使われることが多いようです。
実際には棕櫚以外の木が使われることもあるようですが、棕櫚木は「繊維の特性」や「適度な重さ」、「キレイな音が鳴る」などの理由から選ばれることが多いそうです。
束子(たわし)

私たち日本人の生活にとって身近な存在の束子。食器洗いや野菜の泥落としなど、色々なシーンで使われていますよね。
現在、パームや樹脂系素材が主流となっていますが、ひと昔前は棕櫚製の束子が主流だったようです。材料としては茶色いトゲトゲの繊維は棕櫚の樹皮(毛のような部分)が使われています。
棕櫚とパームや樹脂系素材との大きな違いは繊維の柔らかさにあります。
本来、棕櫚という素材は私たちの体を洗っても痛くないくらい優しい柔らかさがあり、実際に商品として棕櫚でできたボディー束子もあるくらいです。

ほうき

ほうきも束子と同じく私たちの生活に馴染みのある掃除道具ですよね。
小学校の頃、給食後には掃除したかと思います。しかし、その時使用したのはほうきの素材はホーキ草という素材やパーム、竹、ポリプロピレンなどの素材が多かったと思います。
ほうきの素材は使う対象や環境、使用頻度によって金額などでも選ばれますが、
棕櫚製のほうきは比較的、長く使う場合に選ばれることが多いです。
具体的には・・・
最初はリビングや座敷などの屋内掃除に使用し、穂の部分が擦り減ってきたら次に玄関や土間で使用し、最終的に庭や通路の掃除など屋外で使う・・
といった具合にある程度、長期間の使用を見据えて購入する方に選ばれています。
棕櫚製品の産地 和歌山県海南市
和歌山県の海南市は棕櫚の束子やほうきに代表される家庭用品の産地として知られています。
その理由として、土地柄、棕櫚が広く栽培されていたという背景と、その棕櫚の樹皮が耐水性、耐腐食性、伸縮性に優れていたということから明治以降、縄やお風呂場の敷物などの需要拡大により産業として形になっていったという歴史があるからだそうです。
現在でも掃除用具はもちろん、お風呂場やトイレ用品、インテリア、ガーデニング用品など幅広く生活を便利、豊かにしてくれる製品がリリースし続けられています。
ちなみに海南市では毎年11月には地場産業まつりの一つとして「家庭用品まつり」というイベントが開催されています。
棕櫚(しゅろ) 束子、ほうきの耐久性
私たちも束子やほうきを販売する際、
「どのくらいの使えるの?」
「どのくらいもつの?」
など、よく耐久性に関する質問を受けることがあります。
たしかに棕櫚製の束子もほうきもパームや樹脂系の素材と比べて金額も張るためそのように思われるのも当然ですよね。

結論から言うと・・・
耐用年数は使う人の使用頻度や使い方によって大きく左右されるため「何年」または「何時間」使えますという風には言えない
というのが正直なところです。
ただし、束子を使った後、しっかりと水を切ってから吊るして保管したり、ほうきを穂先がつかないように吊るして保管したりすることで長持ちさせることはできます。
ちなみに・・・
棕櫚のほうきはきちんとお手入れして使っていけば「一生で3本もあれば十分」
ともいわれています。
棕櫚ほうきにクセがついてしまったときの対処法
せっかくなので、ほうきの穂先にクセがついてしまった場合の対処法を記載しておこうと思います。
実はこちらも良くいただく問い合わせ内容の一つです。

前項でも記載している通り、基本的に棕櫚のほうきは吊るして保管してください。
置き忘れてしまった等で、穂先にクセがついてしまった場合は・・・
ほうきの穂の部分(クセがついてしまった部分)を水に濡らし、束子などでザっと毛を整えてください。その後、日陰で吊るしてしっかりと乾かしてください。
※ただし水に濡らす際ほうきの棕櫚部分全部をドボンと水に入れないでください。
棕櫚ほうきは針金で締められており、棕櫚繊維がきつく密着しているため中がカビてしまう恐れもあるのであくまでもクセがついてしまった部分だけ濡らすようにしてください。
現在の棕櫚を取り巻く環境
先の項目でも少し触れましたが、古い歴史を持つ棕櫚も時代とともにその周りの環境も変化してきています。
その代表的な例として棕櫚の原料不足が原因で普及し始めたヤシの実の繊維であるパーム繊維や化学系繊維です。

特に化学系の素材は日本人の生活様式が変化していく中で様々な形の製品に対応しやすく、大量生産が可能なこともあり、生活用品市場におけるスタンダードが変化していきました。

その結果、国内で栽培される棕櫚の数は減少していき、材料としての棕櫚を国内で調達することが難しくなっていきました。
現在、一般的に流通している棕櫚の束子やほうきはコシが強く用途に適した中国産の棕櫚が使用されていますが、体に使うボディー束子などごく一部の商品においては、優しい手触りを確保するために希少な国産棕櫚が使用されたりしています。
国産棕櫚のシーン

先述の通り、現在、掃除用品では多くの場合中国製の棕櫚が使われています。しかし海南市の生産者の中には
「国産の棕櫚を残したい」、「国産の棕櫚を届けたい」
という思いから地道に棕櫚山の再生に取り組んでいる会社もあります。
※この話題はまたどこかのタイミングで記事にしたいと思います
現在、一般的流通の中で国産棕櫚で作られた束子は極めて数が少なく、あったとしてもかなり金額の高いものだと思います。
これから先、海南市の棕櫚山再生が進み、国産棕櫚製品も身近存在として見かけるようになったら先述のような過去を思い浮かべつつぜひ手に取ってみてほしいです。
まとめ

今回はあまり日常の中では聞かない木の名前「棕櫚」についてまとめてみました。昨今、テレビや雑誌など各種メディアで取り上げられる機会もあり改めて注目を集めていますね。
私、自身も国産棕櫚のボディーブラシを使用していますが、パームと違って毛が柔らかいので洗った後、痛かったり、かゆくなったりということがありません。
この記事を読んでいる方にもぜひ体感していただきたいモノです。
棕櫚製品の購入を検討している方や棕櫚ってどんなもの??と疑問に思っている方の参考になれば幸いです。